美しい鯉の町・津和野で、寅次郎は以前恋焦がれた歌子と再会した。夫と死に別れ、婚家にも居ずらくなり町の図書館に勤めているという。
心やさしき寅次郎は、歌子を柴又へ誘い寅次郎独特の献身的処世術が始まるのであった。第9作「柴又慕情」の続編となるシリ-ズ第13作。
◆マドンナ/吉永小百合(鈴木歌子役) ◆主要ロケ地/島根県温泉津・津和野
オ-プニング
桜が満開の石段を、紋付袴姿の寅次郎と白無垢姿の花嫁が上がっていきます。その先には、なぜか「とらや」。
「さくら、アンちゃんとうとう嫁さんもらったぞ!」・・・・おいちゃん・おばちゃんが亡くなったことを知らされます。
墓前で途方に暮れる寅次郎。やがて、目が覚めたのは京成電車の車内。乗換駅で降り損ねてしまいます。
主題歌のミニコントは、矢切の渡しから下りた寅が、ラジコン飛行機の送信機をいじり青年を困らせます。
爆笑シ-ン
島根県温泉津(ゆのつ)から戻った寅次郎。「女将が持たしてくれたんだよ」 多量の海の幸の土産を渡します。
続けて、温泉宿で番頭をしていた話をとらやの面々に披露します。「今晩、大事な発表がある」と言い残し・・・・
そして祝賀ム-ドに沸くとらやの食卓。博が代表して、寅の口から出た絹代さんについて質問をしていきます。
次第に、結婚について何も前進していないことが分かり一同愕然。おいちゃんらと大喧嘩になる寅でした。
心に残る名場面
津和野で寅次郎と再会した歌子(吉永小百合)は、当地での生活に見切りをつけて上京し、とらやを訪ねます。
そのまま2階に間借りすることになり有頂天になる寅。いっぽう、さくらは歌子の父(宮口精二)のもとを訪ねます。
父娘双方に葛藤があることを知るさくら。さらに数日後、寅次郎も父親宅へ行き改心するよう説得してきます。
夕方とらやに来た父親は、娘に侘びを言いようやく二人は和解しました。居合わせた一同、皆涙ぐみます。
エンディング
夏真っ盛りのある日、歌子の父がとらやを再び訪れ、おばちゃんが差し出したかき氷を食べています。
やがて歌子のナレ-ションが始まり、大島の勤め先で子供達と元気に走っている姿が映し出されます。
いっぽう、生コン車に便乗させてもらい山陰の海水浴場に降り立つ寅次郎・・・・誰かを見つけたようです。
「お絹さ~ん!」「寅さ~ん!」 家族連れで海水浴に来ていた絹代(高田敏江)との再会で幕を閉じます。
総 括
温泉津へ向け寅次郎らが乗る山陰本線の急行列車。長大編成が気動車急行の全盛時代を象徴しています。
姓を変え鈴木歌子として再び登場の吉永小百合は、演技にもいっそう磨きがかかり大女優の貫禄を感じます。
珍しく寅次郎が入れたコ-ヒ-。それを一口含みしかめっ面をする博たち。コミカルなシ-ンも満載です。
なお、第9作「柴又慕情」より出演のおいちゃん役・松村達雄は、今作が最後の作品となっています。