小学校時代の無二の親友と再会した寅次郎は、連れて行かれた家で、妹のりつ子と初対面で大喧嘩をしてしまう。彼女が病気と聞かされ早速
見舞いに出掛けたが、看病をした寅次郎も恋の病でどっと床についてしまうのであった。とらや一家が九州旅行に出掛けるシリ-ズ第12作。
◆マドンナ/岸恵子(柳りつ子役) ◆主要ロケ地/大分県別府・熊本県阿蘇
オ-プニング
飢饉にあえぐ大正期の柴又村。成金(吉田義夫)が、目の不自由な娘・さくらを「国賊の妹!」とののしります。
そこに現れたのは黒装束の寅次郎。「悪人ども、江戸川の露と消えろ!」 ピストルを放ち悪人たちを倒します。
夢から覚めたのは、九州の連絡船の中。出航間際、自分と女子高生のカバンを間違えて下船してしまいます。
主題歌のミニコントは、子供達がトンボを捕っているのを手伝い、カップルの女性の頭にタモを被せます。
爆笑シ-ン
明日から一家で九州旅行へ出掛ける矢先に帰ってきた寅次郎。ずっと黙っていたことに立腹し大暴れします。
結局一家は3泊4日の旅行に出掛け、寅次郎はひとり留守番をします。一方、九州観光を楽しむさくらたち。
その晩、さくらはとらやへ電話をかけます。「陽が暮れる前から電話機の前で待ってたんだぞ!」 怒り心頭の寅。
一家全員が電話口に呼ばれ、満男の「おならブ-だ」で長電話は終わります。電話騒動は次の晩も続くのでした。
心に残る名場面
りつ子は恩師(河原崎国太郎)の家を訪ね、かつて恋心を抱いていた男性が結婚することを知り体調を崩します。
その様子を兄・文彦(前田武彦)から聞いた寅次郎は、りつ子のアトリエを訪ね、失恋したことを聞かされます。
とらやに帰ってきた寅は、そのまま寝込んでしまいます。数日後、りつ子はとらやを訪れ寅次郎を見舞います。
そして、再びりつ子宅を訪ねた寅次郎。「寅さんにはいい友達でいてほしいの」・・・・二人に別れの時が来ました。
エンディング
正月を迎えたとらや。店先には「寅年」の紙が貼ってあります。さくらは、りつ子から届いた葉書を読み返します。
「・・・・私の寅さんはどうしていますか?まだ旅先でしょうか。スペインにて」 りつ子のナレ-ションが流れます。
場面は変わり、阿蘇山で啖呵倍をする寅次郎。りつ子に書いてもらったデッサンを横に、上機嫌の様子です。
「四谷赤坂麹町チャラチャラ流れる御茶ノ水・・・・」 阿蘇の噴火口が映し出されて、エンディングとなります。
総 括
トップ女優・岸恵子をマドンナに迎えた今作は、観客動員数が48作中最高の242万人を記録しました。
九州ロケでは、とらや一家が産交バスに乗りながら別府・阿蘇山・熊本と旅をするシ-ンが印象的です。
旅館で先方の番号を言って電話を取り次いでもらったり、カメラを「キャメラ」と言うところに時代を感じます。
また、りつ子に想いを寄せる画商役で登場する津川雅彦は、実にダンディでス-ツ姿もきまっています。
PLAYBACK 1973
■1973年(昭和48年)のできごと・・・・日本が変動相場制へ移行(2月14日)/日航機乗っ取り(7月20日)
金大中事件(8月8日)/江崎玲於奈にノ-ベル物理学賞(10月23日)/大洋デパ-ト火災(11月29日)
■1973年(昭和48年)のヒット曲・・・・神田川(かぐや姫)/赤い風船(浅田美代子)/くちなしの花(渡哲也)
私の彼は左きき(麻丘めぐみ)/心もよう(井上陽水)/みずいろの手紙(あべ静江)/なみだ恋(八代亜紀)