旅先で知り合った薄幸な芸者と天王寺で再会した寅次郎。それまで、何かと性に合わなかった大阪という土地が、いっぺんに好きになってしまう。
とらやでは一同ハラハラ。そんなことはよそに、芸者のために大奮闘する寅次郎であった。満男役が吉岡秀隆にバトンタッチするシリ-ズ第27作。
◆マドンナ/松坂慶子(浜田ふみ役) ◆主要ロケ地/大阪天王寺・生駒山
オ-プニング
竜宮城で夢のような時を過ごした浦島寅次郎。柴又村へ帰る決心をし、乙姫様から玉手箱を受け取ります。
しかし、故郷は荒れ果てており、妹と瓜二つの娘から、自分が50年前に神隠しにあったと聞かされる寅次郎。
夢から覚めたのは、長崎県対馬にある神社。子供達から亀を買い取ってやるも、亀に噛み付かれる寅でした。
主題歌のミニコントは、サイクリングの3人連れの1人が江戸川に突っ込み、それを助ける2人も川に落ちます。
爆笑シ-ン
久々にとらやに帰ってきた寅次郎は、社長をつかまえ、夢の中で見た竜宮城のタコにそっくりだったと言います。
寅とひと悶着の末、社長は金策に出掛けていきました。夜になっても帰ってこない社長を 心配するとらや一家。
昼に自分が言った言葉が気になり、源公を引き連れて、題経寺の提灯片手に 江戸川一帯を捜索する寅次郎。
とらやに戻り、酒を飲んで帰ってきた社長にブチ切れる寅。社長と再び喧嘩となり、翌朝 旅へ出て行きました。
心に残る名場面
寅次郎とふみ(松坂慶子)は、生駒山・宝山寺へ出掛けます。ふみから、幼い頃に別れた弟の存在を聞く寅。
その足で大阪港にある運送会社を訪ね、主任(大村崑)から告げられた悲しい知らせ。弟は急死していました。
失意のあまり、涙が止め処なくこぼれ落ちるふみ。従業員の案内で、弟が住んでいたアパ-トへ立寄りました。
やって来たのは、弟と結婚の約束をしていた信子(マキノ佐代子)。ふみの姿を見て、廊下で泣いてしまいました。
エンディング
盛夏を迎えたとらや。大阪・新世界ホテルのオヤジ(芦屋雁之助)が、寅次郎がためた宿代の集金に来ています。
「皆様にはお変わりありませんか?・・・」 ふみのナレ-ションで手紙が読まれ、場面は長崎県対馬に変わります。
寿司屋を営む夫(斉藤洋介)から、寅次郎が来ていると聞かされるふみ。2人は軽バン(キャリ-)に乗り込みます。
実家に到着し、再会を果たす寅とふみ。すべての思い出が蘇ったふみは、寅に寄り添って泣き続けました。
総 括
当時29歳の松坂慶子は、今作において「日本アカデミ-賞」「ブル-リボン賞」など主演女優賞を受賞しました。
芸者役に かしまし娘の正司照江・正司花江、安宿の老人役に笑福亭松鶴など、大阪の俳優陣も見逃せません。
寅次郎が石切神社で啖呵売するのは、マドンナの松坂慶子に引っ掛けた「水中花」。細かい演出には脱帽です。
今作にはタクシ-が多く登場します。大阪の個人タクシ-・東京の京急タクシ-・・・・セドリックが懐かしいです。